入院日記21
入院44日。
昨日あたりからうっすら思っていたけど、今日は確信したね。
患者じゃなくなったって。
自覚症状はまったくなかったり、あるいはおれのように死にかけて救急車で運ばれて、入院がはじまります。
そいでもって長い入院生活の中で徐々に「患者」になっていくのです。
個人差やらいろいろありますけど、最終的には必ずなります。患者にならないと看護師も医者も治療ができないから。
おれは最初の集中治療室時代に時間がかかったけど患者になれたと思うし、以降は患者として振る舞ってきたなとは思う。んまあ、いい患者だったかは知らない。し、そんな評価は高くても低くても興味はない。
そして手術が終わり、集中治療室をでて個室に入ったころからまた感じはじめたんだよね。
入院したころの違和感みたいのを。
それは昨日あたりもあったんだけど、なにぶん、昨日は左肩がとても痛かったからさ。
で、今日、それが抜けたらいきなり感じたね。そうさな、「マトリックス」の仮想現実から目覚めたときみたいな感じでっしゃろかいな。
「あ、おれ患者じゃなくなってる」って。
この感覚はもうすぐ退院だからまわりの病人に対する優越感や差別意識とはちがうのです。
なんつか、入院しはじめ、患者としてなじめなくてヘンなところにいるなって感じがよみがえったというかね。
それは長期入院のちに退院していく患者さんはみんな思うのかね。
ともかく、今朝起きたときに晴れ晴れと思ったのです。
そして、実際、担当医、主治医から「退院」というコトバをはじめてききました。具体的な時期も聞きました。
ひとつ端的なのは、「ベンのストーリー」なんてのを、参照してもらうとよくおわかりでしょうけどお通じが「普通」になりました。スルスルと。
今の病室、おれ以外の3人が痰地獄なんだよな。全員痰がからんでるし、よくしゃべるジジイはくわえてどこか痛いみたいで夜中までときおり「いてえ、いてえよおおお」っていってるんだよな。
でも、あまりわからなかった。なぜなら耳栓がっちりハメてねたから。痰がからむ三重奏なんかまともに聞きながら眠れるワケねえじゃん。
個室にいたときも安心しないで耳栓かけて眠ればよかった。
んま、おれはいままでいかに静かな環境で眠ることができてたのかってことを知る機会でもありましたね。
ってまあ痰の三重奏を聞きながら寝るヒトが多いとも思えないですけどね。
ちょっと前からやってみたかったことを朝に実行する。
6時30分に起きて、歯を磨いたのちに休憩所にお茶をくみにいってその返す刀で紙コップの自販機でコーヒーをかって飲もうという朝の食事前モーニングタイム大作戦よ。
このコーヒーがまたうまく感じたね。あ、いや、ちがうな。普通に感じたんだ。普通に入っていった。
で、飲んでると「よう」なんてオヤジがやってきてたまげる。
上のガキが運動会で遅刻しそうなのでクルマでつれていったついでにきたそうだ。タオルケットを持ってきたそうだ。
で、うれしい事実が発覚。おれ、がっちり入院保険がかかっていたらしい。
なぜならおれが入院するときは店を休もうなんて考えていたらしいから。
あいつはこういうところ抜け目がないんだよなあ。でもまあ助かった。いろいろとそんなひどいことにならずに。
と、なんだか、急速に退院についての機運が高まると比例して、ここにいるのがかったるくなるわなと。これも宿命ですね。
と、思ったらリハビリ医がくる。淡々と早足で800m歩く。これもラク。なおかつちょっと雑談する余裕も生まれる。
今日は6階のフロアを4周だったのが明日は5周で1km歩くそうです。で、ゴールは階段の上り下りだそうです。
いまは「平地移動」だけなんですよね。
そいで相当放置される。一応、1回だけきた担当医の血圧なんかのときにシャワーを浴びる的な話があったけど、そのダンドリはほぼおれがひとりでやってくる看護師と長話をしなければ気が済まないジジイと話してるのをさえぎって、今、シャワーの予約をとってきたので着替えお願いしますなんてうながすくらい。
13時に超音波検査をするなんていってたんで、昼飯後はおとなしくまっていたらそれが14時30分近くに延びる。
と、この検査が予想外に時間がかかる。
やや想定外のことが起こってるそうで、おいおいとは思ったけど、まあ大丈夫じゃね?って感じで。
で、これまた楽しみにしていた、検査が終わったらすぐに戻らないで売店でジュースを買って飲んでいこう作戦も実施。
キレートレモンをためす。うまいわ。炭酸がノドにしみるんだよな。そういわれてみれば手術後にずっとハスキーボイスだったのも治ってきつつある。
と、それで油断していたのか今日は人間関係を甘くしてて、しゃべりかけたジジイにあいまいな返事して「あ、こいつ話きいてねえ」って無視されたり、担当医とだけ話してたことを主治医と話して(上記の心エコーのところで)しまい、「なにそれきいてない」って感じでモメゴトの種を生んでしまったなあと。
ちなみにそのときにきいた話によると手術のときは骨もガバッと開いているのでそれがくっつくまでに3ヶ月はかかるから重いものは持たないようにだって。
どんな大手術だったんだよなあ。
担当医と4回も話してるのに今日おれのところにきた看護師1回だけだぜ。なんだこのほったかれ感。
というか、看護師の方も「もうこいつは患者じゃねえ」って感覚になったんかね。
前も書きましたけど、看護師がすきなのは病気が重い患者さんだからね。
明日以降おれはなにがあるんだろうとも思うけど、まあ、だらだらとすごそう。
そして、明日からは朝にスケジュールをガッチリたずねよう。なにかあるんかいな?って理由で病室に無意味に長くいるのもめんどくせえし。