闘病記なんて書いてるけど、実際問題、まだ入院して1ヶ月くらい。
まあ、先は長いけど、話を聞いたうえでは手術が終わり退院したら、しばらくは頻繁に通院したり入院することなんかもないんじゃないかと思えます。
そういうことでいうなら本当に闘病記を書くべきは奥さんかなと思うのです。 奥さんは10年くらいガンと闘っておられました。 入院退院を繰り返し、一進一退を繰り返しつつ、病院とは縁が切れることのない10年でした。
「ハチミツとクローバー」はそんな奥さんの入院に差し入れとして持って行きました。そして最後に読んだマンガになります。
羽海野 チカ¥ 2,490
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もともと お名前はツネヅネというやつです。
おれの最初の出会いは最終巻に収録されている「星のオペラ」という作品です。これにやられたんですよね。
「コミックキュー」という雑誌がありました。これは毎号テーマを決めてそれに沿った内容の読み切りが収録されているというモノで、「星のオペラ」はドラえもんの道具を使うというもので、その卓抜した発想に舌を巻いた記憶があります。
だけど、それと大ヒットした「ハチクロ」現象と結びつかずになおかつ乗り損ねたので、やれ、アニメ化だ、映画化だっていわれても、「ほーん」とか「へーん」みたいな気持ちではいたんだ。
ただ、 連載が終了して「3月のライオン」がはじまって、今度はうまく乗り、夢中になったしファンになりました。
そこで当然のことながらハチクロも気になり、コツコツと中古でそろえたのです。
で、そろえた時点で欲が失せて、寝かせてあったのを入院した奥さんに読ませました。
「おもしろかったよ」
3回くらい奥さんはいってました。 奥さんは読書家のわりに感想については「おもしろかった」か「イマイチ」くらいしかないです。
で、どうおもしろかったかどうイマイチだったかをたずねるとうまくいうことができずに怒ったりします。
それなのに、3回も、たずねてもいないおれに「おもしろかったよ」といっていたわけは今日10巻一気に読んでわかりました。
貧乏美大生の青春ストーリーです。 2つの三角関係を軸に青春の甘酸っぱいところや恋愛のほろ苦いところ、を丁寧に描いております。
羽海野チカさんの魅力は画力にあると思います。 基本的に非常に速いテンポで流れていきます。 コマとコマへの移動スピードがとっても速い。 けっこうなハイテンポです。これはわりにずっとそのまま最後まで一定に続いてます。 そのテンポの速度を変えないまま、背景、モノローグ、表情などを画力によって読者のスピードを調整されている。そんな風にお見受けしました。
それは「3月のライオン」でさらに磨きがかかっているような気もします。
この「速い」、そしてまぶしい青春に毎巻というか毎話涙がこぼれました。
もれきこえた話だと、真山ってメガネキャラが憎たらしいとかいってて、どろどろした恋愛モノと思っていたけど、そんなことないよなと。ギャグ要員で随所に登場するキャラの「青春」っぷりに涙するジジイといっしょにおれも涙を流してました。みんないいやつだよ。すてきな方々ばかりじゃないかよ。
そして、ハッと気づく。
奥さんはこのマンガの話をおれとしたかったんだ。
どのキャラが好きとか、嫌いとか、あれはひどいとか、よかったとか。
だから「おもしろいよ」と3回もいったんだなと。 おもしろいから読んで話をしようよと。
それに気づいてさらに涙の量が増量。
これをガキに掘り出してもらいわざわざ持ってきてくれといったのはなんとなく、今、読んでおくべきだなと思ったんだわな。
奥さんと同じ入院中の病院のベッドという状況で読むとどうかって。そういうのを「なんとなく」思ったんだ。
そして、この機会に読まなかったら塩漬けにしてあるたくさんのマンガと同じ運命をたどっていたような気もした。
クライマックスの手前、キャラの1人が大けがをし、入院して必死にリハビリをするところ、そこでの葛藤なんかを奥さんは病院のベッドでどんな気持ちで読んでいたのかとか思うとたまらなくなった。
おもしろいマンガだった。読めてよかった。ただ、読むのが遅かったなあ。3年ばかり。 で、このマンガについて奥さんと話したいなと。もう忘れてそうだけど。