闘病記

心筋梗塞になって入院してからの病院関連の記録日記。そんな闘ってません。

検査入院日記

12月17日から19日まで検査入院をしました。

「心臓カテーテルによる検査入院」ってのが正式名称なんでしょうか。「心カテ(しんかて)」なんて略しておられましたね。
動脈より管を通し、血管の通り具合をチェックし、必要であれば治療するというものです。

このための準備期間というのがありましてそれは12月13日よりはじまってました。

退 院してから、毎日、血液をサラサラにする薬を飲んでましたが、心カテは動脈を通して検査する関係でサラサラすぎるのは都合が悪いから、薬の効能を止めた い。さりとて薬は止めたからってすぐに止まるワケじゃない。ブレーキが効かない感じでしょうかね。

だから、前もって飲むのを止めて、なおかつ同じ効能の注射に切り替える。注射ならうつのを止め たら即効能は止まるから。ひいては朝と夜と注射をうちにこいと。
そういうことで朝9時と夜9時の毎日2回通ってました。ホントは入院とかいってたくらいでそれに比べればマシやわな。

朝は通常の外来と並んで注射。夜は救急治療室、いわゆるERで注射と。
いずれの場合も注射自体は看護師がやるけど、診察は医者がやるんだね。この医者待ちに時間がとられてる。まあでも仕方はないか。
医者の診断といってもタテマエだけだから、「変わりないですか?」「はい」で実質2秒。そのあと注射は皮下注射で3秒。前後になんやかやいうて30分から1時間。朝は長かった。
その実質3秒の注射のために通ってました。

12月17日
入院。
入院当日は14時くらいに行き、ほぼなにもしない。景気づけのために検温血圧体重身長あたりを測られる。

病棟は心筋梗塞でかつぎ込まれた、心臓の内科のほう。ただし集中治療室ではない。
しかし、看護師は物覚えいいね。「おひさしぶり」的なことをやたらいわれる。おれはかなり覚えてなかったり。
でも、担当の看護師は記憶してました。御茶漬海苔氏のキャラみたいな感じだけどケハハハと明るく笑うなんていうかキャラの立った方。

病院食も相変わらず。
1日目はなんてことなく過ぎていきました。
同 室のジジイらが屁はこく、部屋で通話するとこれまでにない俗物な感じ。薄々とだけど、彼らも心臓カテーテル検査っぽいので、あんまり入院生活になれ てないのかもな。これまではベテランのところにいたんだな。だからなんていうかうるさいし難物もいたけど、入院生活の肝は心得ていた。それがない。

12月18日
2日目。検査当日。これまた待ち。
医者の都合で4件だか5件あるうちの5件目に。
16時くらいから準備。それまでひたすら待ち。
心臓カテーテル検査を5件連続ってどうなんだろうね?その5件目ってことで医療ミスというか単純に手元がミスったりしたらどうしよう?とか考える。それくらいヒマ。基本、看護師も放置気味だし。というか部屋全体がもう退院間近ばかりで、実際、この日に1人去っていった。

通常心臓カテーテル検査は左腕の肘のところから入れていくそうだけど、おれは最初の外科手術で心臓のバイパスに使用するために左手の血管を取ってしまったからできなくて、右足の付け根から。
そのための準備。
つまり、陰毛を剃って、なおかつ尿を出す管を通すわけです。

先ほども書いたけど心筋梗塞でかつぎ込まれたときに「それら」はやってもらってたけど、あのときは生死の境目にいたわけで。
そういや、昼に検査前の話で知ったけど、救急車での来場のときは20%くらいの確率で死んでいてもおかしくなかったそうです。今回は1%くらいだそうですが。

そのときは夢中で、そのあとの2回の外科手術は麻酔のあとだったのです。

記憶してるのは初体験ということで看護師に陰毛を剃られ、チンチンに管を入れられました。なにげなく雑談したりしてたいしたことがないようにしてました。
電動シェーバーで陰毛を結構念入りに剃ってた。「これで叱られないかな?」とかなり気にしつつ剃ってた。そんな気にしなきゃならないほど重要なのか?と思ってたけど重要なのですね。あとで身を持ってわかりました。

あと管を入れるのは痛かったです。抜くより入れる方が痛いですね。

そして入れた瞬間から終わらない異物感と尿意とあと痛み。たぶん彼女は下手だったな。管にときおり赤い物が浮いてたし。ありゃ血だろ。これを書いてる今も排尿時痛みがあるし。しばらく排尿以外に使えないじゃないか。おれがマイケル富岡だったらどうするんだよ。しかも、こんな季節に。


あと点滴もセットされる。病院は点滴好きだよな(別に好きではない)。

17時過ぎたあたり予定より遅れて検査ははじまります。
もうこのタイミング以降大いなる羞恥プレイもはじまります。
着くなりオムツを脱がされて放置。かなりしばらく放置。かなり丸出しで放置。かなり明るい検査室で放置。丸出しのまま、検査の話ならいいけど世間話。誰それ先生の家の柿の話とか。
そのうちその処置室、手術室ではない、で、一番エラいと思われる菅井きんさんに似た看護師が「あらあらあらだれじゃこの仕事は?」とシェーバーを取り出して、おれの陰毛や太股の毛をふたたび剃りはじめました。
彼女に叱られることを怖がってたんだな。なるほど。

はじまります。
検査室では桑田佳祐の2枚組ベストの1枚目が流れてます。けっこうな音量で。

アフリカの打楽器みたいな筒状のものが大きなアームで支えられておれの腹あたりに位置してます。表面はマイクのように黒くてたくさんの穴が開いてます。
横にはブラウン管のモニタが6台くらい並んで様々な情報を映してます。
このモニタ群とアフリカの打楽器が連動してるのね、あと、おれの寝てる手術台も。
それぞれの動きがシンクロしてて打楽器を動かすとモニタ群も動くし手術台も動く。なんだかスゴイ。スゴイハイテクなのにモニタがブラウン管ってのがまたふしぎ。スチームパンク的。ブラウン管パンクか。

そして手術ではなくて検査なのは実にここなんですね。
足の付け根にいくつかの麻酔注射をしただけで全くのシラフ状態なんですよ。なにやってるか漏れなくわかる。
手術はみてないけど相当な滅菌状態なんでしょうが、そこいらも緩いみたいです。おれの動脈周りしか感染しそうな危険なところはないしね。
たぶん医療機器のメーカーの営業みたいのとかもいたし、どこか同じフロアからはずっと雑談してましたしね。
そういうざっくばらんな雰囲気はいいんだけど、その中で下半身丸出しでいるのはなかなかな体験ですよ。露出モノのAVに主演してるようじゃ。彼女らはこんな心もとない気分でいたのか。

はじまるころには患部だけ穴のあいた青色の布をかぶせてもらったんだけどね。

で、本格的にはじまるとあとはもうやることない。やることないから部屋に帰してくれと思ったけど、どうもおれはここにいなければならないみたいでしょうがなくいる。心臓が取り外せたら便利なのになと思ったり。

痛みはある。歯医者で抜歯したり神経を抜くときに麻酔してても痛みがあるのと同様。痛みの度合いも同様かな。
また、心臓になにかがあるってのもわかるね。軽く異物感。
おもしろいのは、付け根から各種クスリを入れてるみたいで、入れるたびに「ハイ、今から身体が熱くなりますよ」とか「口がスッとしますよ」なんていわれた瞬間にいわれたとおりの現象が起こること。催眠術か!って。

桑田佳祐のベストはCD「TOP OF POPS」を流してるようだけど、どうも汚れてるか傷のあるCDみたいでときおり曲が滑る。
それがリピートになって4回ともすべる。いつも最後の曲「素敵な未来を見て欲しい」が飛ぶ。スゴく気になる。

ひとりいて「大丈夫ですか?」っておれに時折たずねるのが大きな仕事になってる助手なのか看護師なのか医者の玉子かわからない若い女性にも「曲が飛んでるのが気になる」っていったくらいで。

白い恋人達ほか4回づつ聞いたあたりで終了。してみるとCDはいいチョイスかもな。ほどよく耳なじんでじゃまにならず退屈にならず。

止血といって患部を20分くらい押さえられるのが1番痛くて間がもたなかったな。
桑田佳祐は担当医の趣味ってことでもないらしい。その部屋の持ちCDみたいなもんで。いや、そんなことよりほかにきくことあるだろ。

止血したあとガムテープみたいな太いテープをあちこち貼り付けられた。ああ、このために陰毛を剃ったんだな。はがすとき痛いからねーって。

そのあとストレッチャーごと処置室の別仕切りのところで今回の話を付き添いの叔父と叔母ときく。

2ヶ所あった血管が細いところにステントという金網を入れて補強して膨らませたと。つまり検査と治療とあったわけだ。これでステントも4つとか5つとか。すっかりなステントマンだ。バイクでグランドキャニオンを超えるレベルのってそりゃスタントマン。

検査の最中からはじまってたし終わってからも1番懸念してたのが腰の痛み。懸念じゃないな。実際痛い。とても痛い。痛みランキングじゃ1位と2位の間をいったりきたりしてる。
ただ絶対安静でなおかつ2時間はベッドの角度も動かしてはならぬってことで、それがともかく苦しかった。おまけに水もダメだったし。
なおかつ足を縛り付けられていた。麻酔が切れて鈍い痛みが足の付け根から。あと書いてないだけで尿の管の痛みもずっと。そこいらは外科手術と同様だね。手術あとから患者の戦いがはじまるってね。

12月19日
看護師は重症患者にはやさしいの法則であれこれ面倒はみてもらえてた。
2時間後が実に19日の23時30分過ぎ。ベッドをあげてもらい冷たい水を飲ませてもらいようやくひと心地。
4時間後。午前2時くらいかな。検査のために抜いていた食事を食べる?って打診。要らないよっていうと看護師は心配するのよね。食事を食べた食べないが健康を見極めるバロメータだしね。
せっかくとっておいてもらってるし食べることにしましたよ。夜の2時に。どんな徹マン状態だよ。

と、これが初体験だけど心臓カテーテル検査用の食事だったんですよね。
食事の札にも「心カテ用」なんてありましたし。

内容は、食パン2枚にイチゴジャム。オレンジジュースに味噌ゼリーです。看護師にジャムを塗ってもらいました。
最後の味噌ゼリーが変わってた。文字通り味噌味のゼリーです。全員に不評ですなんて看護師も笑っていってました。
おれはおもしろく食べましたけど、病気の関係でこればかり3連続ででたらそりゃあシンドイだろうなとは思いましたよ。

そのさらに5時間あとには心カテ食の朝食バージョンがでました。
シソのオニギリ2個に、ファストフードで出てくる飲み口の小さな穴があいているフタに取っ手がついたカップホルダーの味噌汁。そして、おそ松くんのチビ太が好きな串に刺してあるおでんみたいに里芋と高野豆腐の煮物が串に刺さって2本。
通常心臓カテーテル検査は肘からやってしばらく腕を動かせないから片手で食べることのできる料理が心カテ用ってことなんだな。おれは足が固定されてベッドを最大に傾斜させても届かないし、片手には以前点滴があったからやっぱり心カテ用は有効でした。

朝食をたべたあとに担当医がやってきて雑談しながらおれのオムツをおもむろに開けて粘着テープをベリベリとはがしはじめます。
あんだけ陰毛を剃ってもやっぱり痛いのなあ。
これでさらに陰毛が抜ける。担当医も「はがしますよ」くらいのことはいえばいいのに。っていったら笑ってた。やっぱり5連チャンは大変だったのかね。余裕ができてたみたい。

痛かったのはこれくらいでしたかね。あとは例によって点滴が邪魔臭いこと。

 

と、油断していたら尿の管を抜きに来て、太ももを拭きにきたときに判明。

検査の最中、ときおり太ももが冷たかったんですよね。なんだろう?と思ってたらなんのことはないてめえの血なんですね。そりゃあ動脈に管を通してそれを引き抜いたりするんだもん、血はでますね。思った以上にドバドバだったし、思った以上にあったみたい。シーツに赤い凝固したあとの血のカタマリが転々とあってたまげたわ。そりゃあ安静だわな。

 

と、19日の昼からはもう普通食。そして20日には退院でした。朝イチで帰りたいといったらそれもあっさりとかない、9時過ぎには退院でした。もともと治療がなかったら水曜日のうちに退院だったそうですからね。念のための1日だったわけです。

久しぶりの入院はこれで終わりです。障害者手帳があるので医療代はタダかと思ってましたけど、病院食代と病院着は有料なんですね。

あ、あと、最後に「また8ヶ月後だな」といわれました。トホホ。それまでに陰毛を伸ばしておこう。